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【連載】住宅部会通信2009

2つのコーポラティブ住宅見学会
-これからの集住体デザイン・住まい手参加について考える-

住宅1
執筆者:荒木公樹(空間計画)

平成21年9月12日(土)秋雨の降る中、34名の参加のもと9月例会「2つのコーポラティブ住宅見学会」が開催されました。2つの住宅は、一概にコーポラティブ住宅と言っても、「戸建て住宅(奈良・青山コーポラティブ住宅)」と「集合住宅(つなね)」というように形式は全く異なっています。個人的には、その共通する部分と異なる部分について、興味を抱きながら見学会に臨みました。

「奈良・青山コーポラティブ住宅」は、UR都市機構が約20年前に開発した住宅地の最後まで残った一角、急峻な雑木林状の斜面地(最大高低差約20m、最大傾斜55度超)に、2005年に完成した10戸の戸建て住宅群です。
この計画は、自然の豊かな住宅地で子供たちを育てたいと考えていた下山聡さんが偶然にもこの敷地と出会い、敷地の切り売りを交渉したものの、URの販売条件が敷地全体の一括購入であったために、複数の住民を募って共同購入を検討したことから始まりました。
何軒かの住宅を無秩序に建てるのではなく、全体をひとつの調和した集落のようにつくりたいという下山さんの趣旨に賛同した人々が集い、議論を重ねた結果「戸建てコーポラティブ住宅」を目指すことになりました。戸建てコーポラティブ住宅の過去の参考事例が見当たらない中で、住民間での役割分担、試行錯誤しながらの資料作成、多数決や抽選を排除し全員が納得するまでの話し合い等々、さまざまな紆余曲折を乗り越え、計画の開始から4年の歳月を経て、完成に漕ぎつけました。
各住宅の設計者の選定に当たっては、キャリア・実績は問わずに、プロジェクトの趣旨や単体の住宅以上にエネルギーを要することが理解できる専業の設計者であることを条件としました。設計では、①屋根材を統一する②質感に乏しい材料は選択しない③隣り合う住宅どうしで一点以上デザイン上の共通点を連鎖させる④共有広場に開いたデザインとする⑤塀・フェンス等境界を明示する工作物は設けないといった5点のルールを定めました。施工に当たっても、コスト面や竣工後のメンテナンス面で大きな効果がもたらされるように、発注先や工程調整の合理化、共同購入等種々の工夫を凝らしたとのことでした。
 住宅内部については、下山さんのご家族の住まいと仕事場を兼ねた「オモヤ」、住宅の建設を機に同居することとなった下山さんのご両親の住まいである「ハナレ」、そして1人がようやく寝ることができるくらいのスペースを持つ昨年完成したばかりの「コハナレ」を見学させていただきました。いずれの部屋からも近景は屋根の連なりによる風景を、遠景は生駒の峰々による風土を感じることができ、あたかも多くの時間を重ねた集落の中の住まいに身を置いているような錯覚に陥りました。また、多世代にわたる家族がともに暮らす家として、各人の成長とともに起こる変化を大らかに受け止めることのできる住まいであると強く思いました。

2つめの見学先である「つなね」は、2000年に完成した23戸の住宅と集会室からなる集合住宅です。この計画は、今回の見学会の講師である山下好次さんの奥さんが、公団住宅の同じ棟に住んでいた瀬渡比呂志さんに声をかけたことから始まりました。先の青山コーポラティブ住宅も同様でしたが、募集を始めてから数ヶ月で約半数の10世帯は集まったものの、説明会を重ねても、何人かの応募があっては同じ数の人がやめてしまうといった一進一退の状況が長く続きました。さらに、このコーポラティブ住宅は、組合と土地所有者や建設会社が直接契約を結ぶ一般的な形式と異なる方法が採用されました。ディベロッパー役を引き受ける建設会社が信託銀行の銀行部門から融資を受け、土地所有者から土地を取得すると同時に、信託銀行の信託部門に対して事業を委託し、さらにこの信託部門が施工者としての建設会社に対して工事を発注するという方法です。工事が終わった段階で、信託銀行から建設会社、さらにユーザーへと住宅が売り渡されるというものでした。
事業のコーディネートと設計は、コーポラティブ住宅で豊富な経験を持つ伴年晶氏(VANS)に委ねられました。全体の配置は、東西方向に7mの高低差を持つ敷地の真ん中に中庭を配し、中庭の両側に3階建の住棟が建つといった構成です。4本柱に支持されたスラブが積層するRC造のスケルトンに対して、外壁や内装が自由に設計できるといった特徴を持ち、その特徴が外観のデザインに反映され、豊かな表情を醸し出す集合住宅となっています。
住宅の内部については、3軒拝見しました。中でも「つなね2-01」は、今回の見学会のもう一人の担当者である阿久津友嗣さんの自邸で、個人的には竣工直後の発表時から気になっていた作品を拝見するという幸運な機会となりました。私室と阿久津さんの仕事場も兼ねる公室、収納帯がストライプ状に配置された概念的なプランが果たして実体として機能しているのだろうかという点に興味を持っていたのですが、休日には公室を事務所として所員が立ち入ることができないといった時間による空間のルールを何種類か用意することで現実的に成り立っていることを阿久津さんの説明から知り、数年来の疑問が腑に落ちる経験となりました。また、二方が土中にある地下室という悪条件を建築家の知恵を駆使して乗り切り、採光と通風もきちんと確保されている点に、傾斜地における集合住宅のプロトタイプとして十分に機能するという好感を持ちました。

いずれの住宅も、住まい手の皆さんが経験したことのない問題にぶつかりながらも、多くの人々との協働で乗り越えていったことを知りましたが、そこには現在でも続く確かなコミュニケーションが存在したことが一番の成功のもとではないかと感じました。今回の見学会はコーポラティブ住宅という事例ではあったものの、個人住宅や一般建築でも共通する大切なことを受け取る貴重な機会となりました。
住宅2 住宅3
「オモヤ・ハナレ」垣内光司設計
住宅4
「つなね」VANS/伴年晶設計
住宅5
「つなね2-01」阿久津友嗣設計
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11:14 : 2009年「秋号」:  トラックバック(-)  コメント(-)
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