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【連載】子供と考える建築

まちづくりはひとづくりから・・・

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執筆者:高田 典夫
(JIA関東甲信越支部 三多摩地域会 代表) 
(実践女子大学・アトリエテン)

住環境という言葉で表される住まいの周辺は、もちろん個々の家から始まりますが、それを取り巻く環境こそまずは考えなければならないことであります。自分が住む場所を探さなければならなくなったときに初めて、住環境として個々の住宅のことを「一生に一度の買い物」として考える現在の状況では、自分の住む街とのいい関係を保つことも、自分が住む街をよりよくしていこうと考えるきっかけになることもないと思われます。子供の頃から何らかの関心を持って、自分の住んでいる街を眺め、自分の住んでいる家を考える機会を持つことが大切なことであろう。

子どもたちは自分たちの住んでいる家、街をどのように見ているのでしょうか。毎日通っている学校への行き帰りなどで目に入っているいろいろな家、街の風景などを気に留めているのでしょうか。そもそも、自分たちの住んでいる街に関心を持ったことがあるのでしょうか。まちづくりの基本は、いってみればそういう些細なことに興味を持つところから始まるのではないかと思っています。
二種類の長さの材木とゴムバンドで自分たちのはいることができる「いえ」をつくりあげていく空間ワークショプは、中野地域会の考案した空間造形ワークショップから始まり、三多摩地域会では武蔵野市立のいくつかの小学校で授業の一環としての「家つくり」ワークショップとして実施して、いくつかの新しい試みを試行しながら授業の一形態として根付いていこうとしています。この試みは、隣接する西東京市の小学校にも波及し、三多摩地域会で企画をした西東京市立田無小学校でも「秘密基地をつくろう」という空間造形ワークショップが行われました。「学校教育の活性化のために、学校の教師による指導だけでなく、実際に体験するために出かけていったり、その道の達人に学校に来て頂いたりする活動が重視されています。」という校長先生の話にもあるように、建築家が地域に関わることは、建築をつくることだけでなく街を考える専門家として地域に貢献できる大きな職能であり、そのことが子どもたちに与える影響が少なくないことを認識できます。

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写真(左):校庭にできた街並み 
写真(右):材木とゴムバンドでできたみんなのいえ

2005年度から始まった武蔵野市立の小学校での空間ワークショップは、我々にとっても新鮮な体験であり、子どもたちにとっても先生方にとっても初めての体験で得るものは多かったと思いますが、もっと子どもたちに興味を持ってもらえる授業はできないかと先生方と相談し、2006年春に行われた武蔵野市立第三小学校でのワークショップでは、事前にプレスクーリングを行うという新しい試みを行いました。プレスクーリングとは、ものつくりのためのアイデアを引き出すきっかけづくりをする授業のことをいい、ワークショップ当日の1〜2週間前に行います。このプレスクーリングでは、図工科の授業時間を使い「自分たちの住んでいる街を見直してみよう」というテーマで「街歩き」を行いました。その後に行われた武蔵野市立境南小学校では、「算数」の授業で習っている「立体を調べよう」という単元と連携したプレスクーリングを行い、建物に隠れているいろいろなかたちを探し出すことから始めて、安定したかたちをつくり出すキーポイントとして「三角形」の大切さを学び取ってもらおうと構成しました。

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プレスクーリングでの街歩き

プレスクーリングの企画立案をしている時に考えていたことの一つに、子どもたちが関心を持ち続けてくれる授業内容は何かということがありました。分野は違いますが、初等科教育法の中で取り上げられている「よい授業」の4原則(条件)というものがあります。
「子供が体育の授業に何を望んでいるのか。私がこれまで作文を通して知り得た点から言えば、次の4点に集約できる
1. 精一杯運動させてくれた授業
2. ワザや力を伸ばしてくれた授業
3. 友人と仲良く学習させてくれた授業
4. 何かを新しく発見させてくれた授業」(高田典衛「授業としての体育」1972、明治図書)
これらは小学校における体育の実技指導の中から抽出された原則ですが、今回、空間ワークショップの場で感じたことも同様のことでした。「動く楽しさ」「集う楽しさ」「わかる楽しさ」「伸びる楽しさ」この4つの楽しさの集約される授業が求められているのです。
小学校教育は、ある意味で言えば社会生活の基本を学ぶことになります。科目領域にとらわれずに学べる環境は、地域とともにつくり出していく必要があります。我々が行っている空間ワークショップは、学校教育の場で新しい試みをしようという何人かの意欲的な先生方の存在により「たまたま」実現したことかもしれませんが、このことが及ぼす影響は少なくないことをこの実践で知ることが出来ました。これら地域における活動はそれぞれの地域で引き続き行われています。このことにより次世代を担う子どもたちが我々を取り巻く住環境に関心を持ち、街を考えていこうというきっかけをつくり出してくれていくものと考えています。地域共に行う建築・住環境教育は、そこに住むひとを取り巻くいろいろな事象に敏感に反応できる人を育てていくことが必要です。いろいろな視点で街を見るための基礎知識としての建築・住環境教育は空間ワークショップを通してその端緒についたばかりですが、いくつかの試行を経てその効果は認識されてきています。その効果を見届けるのはこれから先長い時間がかかるかもしれませんが、少しずつでも続けていくことが必要であろうと考えています。
まちづくりはひとづくりから・・・
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17:43 : 2010年「春号」:  トラックバック(-)  コメント(-)
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